11月16日から2019年2月24日までTOKYO MYSTERY CIRCUSU(以下:東京ミステリーサーカス)で開催されている、SCRAPオリジナルのリアル脱出ゲーム『さよなら、僕らのマジックアワー』。“青春”をテーマにした本公演を、ライターが体験レポート!!
「マジックアワー」とは、映画用語で「日の出直前と日没直後、薄明の光によって最も美しいとされる時間帯」のことだそうです(三谷幸喜監督の映画『ザ・マジックアワー』といった作品もありましたね)。
つまり、“一日のうちで最も美しい時間帯”であり、同時に、これらの時間帯は「彼は誰時/誰そ彼時」とも呼ばれ、すなわち“何者でもない時間”でもあるのです。
“最も美しく、そして何者でもない時間”……。人はきっとそれを“青春時代”と呼ぶのでしょう。
ー『さよなら、僕らのマジックアワー』公演に行ってみた!ー
なんて、ちょっとポエミーな書き出しで始めてみましたが、そんな「マジックアワー」を題材としたリアル脱出ゲーム『さよなら、僕らのマジックアワー』が、現在、新宿の東京ミステリーサーカスで絶賛開催中です。こちらは、SCRAPベストイベント2016年1位・2017年2位のリアル脱出ゲーム『君は明日と消えていった』制作陣による完全オリジナル新作となっています。
イラストレーター・飴村氏による美しいキービジュアルも印象的な本公演を早速体験してきましたので、今回はその体験レポートをお届けします!
まず、『さよなら、僕らのマジックアワー』のストーリーは以下の通り。
=====<STORY>=====
あなたは映画部に所属する、高校3年生。
5人だけの小さな映画部で高校生活最後のシネマコンクールに出品する作品を力を合わせて制作してきた。
映画の制作も大詰め。いよいよ残るはラストシーンの撮影のみ…そんな大切な撮影の日、映画の主演を務めた後輩の少女”はづき”が突然姿を消した。
「先輩、ごめんなさい。私はこれ以上、ここにいることができません―」
彼女の痕跡は、まるで初めからそこにいなかったようにすべて消えてしまった。このままでは撮影はおろか、コンクールへの出品も出来ない。
何故、彼女は姿を消したのか? 追いかけたその先には、意外な真実が待ち構えていた。目が眩むようなマジックアワーの空の下で繰り広げられるあなたと仲間たちが主役の、青く切ない物語。
あなたは自分の力で、彼女の真実にたどり着きラストシーンを撮影することが、出来るだろうか?
==================
というわけで、4人一組となって会場に入ると、テーブルの上にはマイクや映画で使うカチンコなど、映画部らしいグッズが並んでいます。ゲームが始まるまでに、藤山高校映画部のメンバーである私たち参加者は「監督」「助監督」「照明」「ナレーター」の役割に分かれないといけません。
それぞれがどの役割を担当するかを話し合って決めたら、自分の名前と生年月日と共に、テーブルに配置されたタブレットへと登録します(ちなみに、生年は現役高校生なので2000年か2001年しか選べません)。気分はもう現役高校生……!
机の上に並ぶアイテムが気になりつつも、公演が始まるまではグッと我慢。ワクワクしながら公演開始時間を待っていると、いざスクリーンの幕が開きました!(本当に幕が開くわけではないので、あしからず)
-アニメでわかる、“僕ら”の前日譚-
公演開始のイントロの後、会場に設置されたスクリーンには、藤山高校映画部とはづきのこれまでのストーリーを描いた3DCGアニメーションが映し出されます。
本公演ではゲーム会社のコロプラやアニメーション制作会社のGONZOが制作協力に入っているため、映像のクオリティも高く、このアニメだけで十分な見応え!はづき役には人気声優の小松未可子さん、プレイヤーの心の声をこちらも人気声優である山下大輝さんが担当しており、事前にあらすじを知らない人でも、すんなりと作品の世界へと入っていく事ができます。
今は私たち、藤山高校映画部が制作する作品の撮影最終日の前日。諸々準備を進める中で、はづきとのとあるやり取りがあるのですが、中でもタブレットデバイスを駆使した斬新な演出には、会場から思わず大きな歓声も上がっていました。
こんなふうに、本公演ではタブレットデバイスなどを使うことで謎解きを進めていく場面もあります。
そして、お次はラストシーンの簡単なリハーサル。こちらもタブレットを使い、最初に決めたそれぞれの役割に応じて、映画撮影の手はずがわかるようになっています。
これで、明日の撮影もバッチリ……のはずでした。
ところが、撮影当日。はづきはどこかへと消えてしまいました。なぜ、彼女は私たちの前から姿を消してしまったのか? それでも、シネマコンクールに出品する作品を完成させるため、1時間後に迫ったマジックアワーにラストシーンを撮影するため、私たちはなんとかしてはづきを探し出さなければいけません!
-「脱出失敗」しても達成感は残る-
私たちははづきが残した手がかりから、あーでもない、こーでもないと話し合いながら、彼女の足跡をたどっていきますが、謎解きを通じて、はづきの人柄についてもより深く知ることができます。本当に映画が好きで、映画部での作品作りを楽しんでくれていたはづき。謎を解くにしたがって、「なのに、なんで急に消えちゃったんだ……!」という気持ちが募ります。
また、今回の謎解きは、映画部メンバー全員が一丸となってひとつの謎を追うという形式になっているため、「個々人が分担して謎を解かないといけない」といったパートは少なく、リアル脱出ゲーム初心者の方でもしっかりとチームに貢献できる作りとなっているのは嬉しいポイント。
一方で、ほかのリアル脱出ゲームと比べると、「次に何をするか?」ということを参加者自身が決めないといけない部分も多く、謎解きガチ勢の方にとっても歯ごたえのある謎になっているな、と感じました。
序盤は謎が謎を呼ぶ展開となっており、グイグイとストーリーに引き込まれていきます。そして、明かされる衝撃の事実……! それでも、私たちは迫りくるマジックアワーを前に、全力を尽くすのです。
……こうして、1時間たっぷり濃密な謎解きを楽しんだ私たち。前後の演出含めると約110分間の物語体験。残念ながら「脱出成功」とはなりませんでしたが、それでもみんなで協力して頑張った後は、どこか達成感を感じることができました。
“みんなで力を合わせて、一つの目標へと向かっていくこと”。『さよなら、僕らのマジックアワー』では、一時間のゲームを通じて、その懸命な頑張りがもたらす美しい一瞬を、非常にドラマチックな形で描き出していきます。それはまるで、一篇の映画のように。
公演が終わった後には、「そういえば、学生時代は自分も熱心に部活に取り組んでいたなぁ」なんてことを思い出したりもしました。こんなにドラマチックではなかったかもしれないけれど、それでもそこには確かに“青春”があった。大人になった今では、こうして思い出すことも減ってしまったけど。
▲1F設置の黒板アート
本公演のテーマソングであり、MINT mate BOXがカバーするGOING UNDER GROUNDの名曲『トワイライト』には、こんな一節があります。
「主役は君と僕で それぞれほら違うストーリー」
『さよなら、僕らのマジックアワー』の主役は、“君”であるはづきと本公演に参加する“僕”たちです。そして最後には、僕らだけの感動的なラストシーンが待っています。
そんなふうに、参加者全員もきっとそれぞれが違った青春を経験してきたはず。
『さよなら、僕らのマジックアワー』では、本公演の制作秘話や解説シート、限定の謎などが詰まった「反省会キット」付きグループチケットも販売されています。ゲームを終えた後は、謎解き反省会と合わせて、自分の青春の思い出を語り合ってみてもいいかもしれませんね。
+++++【公演情報・チケット購入】+++++
リアル脱出ゲーム「さよなら、僕らのマジックアワー」
日程:開催中~2月24日(日)
会場:東京ミステリーサーカス(新宿)B1Fヒミツキチラボ大ホール
チケット購入👉https://mysterycircus.jp/bokumaji/