2月14日、12時の鐘がなるまでに。7
【第5章】
ショータの家にたどり着いた1人と2匹。
玄関の前で立ち止まると、ハイネは不安そうにこちらを見た。
「どうしましょう、新入りさん、カムパネルラさん。ぼく、何を話したらいいか、ちゃんと考えられてないです。人間になって嬉しい気持ちのまま、何も考えずに……」
カムパネルラは、緊張して訳が分からなくなってしまっているハイネに優しく声をかけた。
「大丈夫。そこのチャイムを押したら、きっとショータくんが出てくる。そしたら、想いを伝えて、ラッピングしたプレゼントを渡して、無事ミッションコンプリートさ」
あなたもハイネに頑張れ、と声援をおくった。
「わ、わかりました」
ハイネは震える手でショータの家のチャイムを押した。
ピンポーンと響き渡る音のあと、ドタドタという足音がして、すぐにガチャっとドアがあく。
そこにいたのはショータではなく、焦った顔をした女の人だった。どうやら、ショータのお母さんのようだ。
彼女はハイネの顔を見ると、少し落ち着きを取り戻して「こんばんは。こんな夜遅くに、危ないわよ。どうしたの?」と優しく声をかけてきた。
「あ、あの……ショータくんに、」
「翔太!?……翔太の居場所、知っているの!?」
ショータの名前を聞いたとたん、彼女は顔色を変えてすがるような声でこちらに問いかけてきた。ハイネはその勢いに驚きつつ、ショータに何かあったのかと話を続ける。
「……ショータくん、どうかしたんですか?」
「夕飯が終わったあと、お風呂の時間に部屋に呼びに行ったら、部屋からいなくなってたの。トイレや、お父さんの部屋、家のどこを探してもいなくって、ハッとして玄関を見たら靴がなくなっていたのよ」
「そ、そんな……」
「夕飯のときに、私が、あんなこと、言ってしまったからかしら……」
何か心あたりがあるように頭を抱える彼女は、ふとハイネの首に巻いてある真っ赤なマフラーを見て、はっとしたような顔をした。
「あなた……その真っ赤なマフラー。きっと翔太の一番のお友だちね」
「いえ、ぼくは……」
「お願い、もし、どこか翔太が行きそうな場所に心当たりがあったら、教えてほしいの。今日はもう夜遅いから、もちろんお家に帰ってからでいいわ。あなたに何かあってもよくないもの。さ、送ってあげるから、今車を用意するわね」
彼女は、車の鍵を用意して外に出る準備をしはじめた。
「……ぼくは、家がとっても近いので、大丈夫です! それよりも、ショータくんのことを探してあげてください、ぼくもショータくんを探してみます……!」
ハイネはそう言って振り返ると、急いで駆け出した。
「どうしましょう、新入りさん、カムパネルラさん、ショータくんが……!」
ハイネは、近くでで待っていたあなたとカムパネルラに泣きそうな顔で叫ぶ。
あなたとカムパネルラは顔を見合わせてうなずくと、ハイネに1枚の紙を差し出した。
「これは……?」
「さっき、ショータくんの部屋に入ろうとしたら、木の上に引っかかってたのさ。ショータくんはちゃんとお母さんにメモを残していたけど、窓が開いてたから風で飛んじゃったみたいだね。自分たちが猫でよかったよ」
ハイネは、受け取った紙を開いた。
赤いシールで封がされた紙を開きましょう
「わすれものをしちゃったから、公園に取りに行ってくるね……」
「うん、ショータくんは公園に忘れ物を取りに行ったみたいだね」
「……早く、行きましょう! ……でも、どこの公園か書いていないです。どこに行ったんでしょうか……?」
「よく考えてごらん、彼の行く場所は一つしかないはずだよ」
ハイネは、ショータがどこの公園に行ったのか、一生懸命考え始めた。
ショータが行った公園がわかったらここに入力しましょう
ショータの行った公園のヒント
ショータくんは公園に向かったみたいだ。
公園について、カフェの店員さんが何か言ってなかっただろうか。
答えはこちら
カフェのお姉さんは『去年の3月になくなったこの街で一番大きな公園の跡地にアトリエができる』と言っていた。この街で一番大きかった公園は「ほしぞら公園」だが、今は「はなぞの公園」しかないことがわかる。
よって、ショータくんが向かった公園は「はなぞの公園」だ。