『ゴジラ迫るホテルからの脱出』ディレクターインタビュー
公開日:2022/06/03
ホテルに宿泊しながら謎解きを体験できる人気シリーズの最新作がいよいよ来月スタートします。今回の舞台は熱海。そしてプレイヤーが対峙するのはゴジラ!
熱海後楽園ホテルの楽しみ方と、ゴジラファン必見の情報まで、コンテンツディレクターの吉田さんにお話を伺いしました。
インタビュー・文 青木たつや
ゴジラ登場は温泉でのひらめき!?
― ホテルを使ったリアル脱出ゲームは今回で3作目となります。ホテルシリーズのメインディレクターを務めるのは初めてかと思うのですが、前作まではどのように関わっていましたか?
吉田 メインではなかったのですが、第一弾『夜のミステリーホテルからの脱出』のときに、ゲーム中の1つのステップを担当していました。なのでホテルを使ったリアル脱出ゲームがどのようなものかは知っていましたし、作るのがどれだけ大変なのかもよく理解していました。
― 数あるリアル脱出ゲームの中でもホテルを使ったコンテンツは特殊ですよね。どのあたりが特に大変なものでしょうか?
吉田 普通のリアル脱出ゲームと比べてボリュームが多いので、そこをどうやってまとめ上げていくのかがポイントになるんだろうな、と当時から思いながら見ていました。ホテルに宿泊して一晩中かけて謎を解き明かせるのがコンセプトでもあるので、そこを考えるとどうしても長時間かけて楽しめるものを作る必要があるだろうと。
― 一方で、ゴジラとコラボするのは東京ミステリーサーカスで開催された『シン・ゴジラからの脱出』以来となりますね。
吉田 『シン・ゴジラからの脱出』については僕は全く関わっていなくて、純粋にプレイヤーとして楽しませてもらいました。
― なるほど。宿泊型リアル脱出ゲームとゴジラ、どちらについてもメインディレクターを務めるのは初めてとなったわけですね。これまでどちらにも関わりが薄かった吉田さんが担当することになったきっかけはありますか?
吉田 まず熱海後楽園ホテルさんから「一緒に何かできないか」というお話をいただいたんです。そこでまずは社員数名で下見に行くことになりました。どんな雰囲気の場所なのかを確認しましょう、くらいの温度感で。それで実際に見てみたらとても素敵なホテルでして…。ここならラグジュアリーな体験をしつつも、東京で開催してきた宿泊型のリアル脱出ゲームとは違ったこともできるんじゃないかとイメージが膨らんでいったんです。そこで自分が今作のディレクターを担当することになりました。
― この時点ではまだ、あくまでも熱海後楽園さんとのコラボであって、ゴジラの企画ではなかったんですね?
吉田 そうなんです。まだゴジラの話は出てなかったんですよ。でも下見のときにみんなで温泉に入っていたら、急に取締役が「ゴジラだな…」って呟いたんです(笑)。実は映画『キングコング対ゴジラ』の公開が1962年で、その最終決戦の地が熱海だったんです。つまり熱海とゴジラは所縁がある。更に街では「熱海対ゴジラ」というスタンプラリーのイベントが開催されていたりして、地元にもゴジラが根付いている部分があるなと。しかも今年は『キングコング対ゴジラ』の公開から60周年という節目でもあるので、これは取締役の言う通り「ゴジラしかないな」ということで話がまとまりました。
― 取締役のファインプレーですね(笑)!
吉田 東京に戻ってすぐ企画書を作って、それを東宝さんにお見せしたところ、快く受けてくださいました。実は熱海後楽園ホテルの創業が1965年で、映画『キングコング対ゴジラ』の公開は1962年。映画の舞台になったというだけではなくて、お互いの歴史がとても近いんですよね。つまり今回、熱海後楽園ホテルでゴジラと戦うことにとても説得力があるなと思っています。
― 制作が始まった当初、吉田さんの中のゴジラのイメージはどのようなものでしたか?
吉田 実はそこまで詳しいわけではなくて、最近だと映画『シン・ゴジラ』を観ているくらいのレベルでした。ただ幼少の頃に映画館で『ゴジラVSモスラ』などは鑑賞していて、とにかくゴジラは怖い存在だという印象が吉田少年の心には刻まれていました。そのイメージが大人になった今でも強く残っていたので、自分の中での土台は最初からブレずに作ることができたと思います。
― 宿泊型のリアル脱出ゲームがなにかとコラボするのは今回が初めてのことですよね。ある意味で前例がないことにチャレンジするにあたって、苦労した部分はありましたか?
吉田 うーん、なにかあったかな…(しばらく考える)。特に思い付かないなあ。まあ、日頃の経験が物を言うんでしょうね!(笑)(後日談:本当はめちゃくちゃ苦労したんですけど)
― 流石すぎる(笑)!確かに吉田さんはこれまでに「謎解き街歩きシリーズ」や「リアル潜入ゲーム」といった、一風変わった作品を数多く手掛けてきましたよね。そういった部分の経験値はかなり溜まっているのかもしれません。
吉田 そうですね、幕張メッセで開催した『リアル脱出ゲーム×ドラゴンクエスト 大魔王ゾーマからの脱出』も担当していたので、今回のように大きなイベントに対してのノウハウはありました。そういった経験を活かしていければ、きっと面白いものにできるはずだと思いながら作りましたね。
ホテルはとにかく最高の一言!
― 舞台となる熱海後楽園ホテルの印象をもう少し詳しく聞かせてください。
吉田 まず宿泊する部屋が素晴らしいんですよ。いわゆるオーシャンビューで、窓から相模湾が一望できるんですけど、初めて見た瞬間に感動して「うわー!」って叫んじゃいました(笑)。それと食事も本当に美味しくて。ビュッフェ形式なんですが、できれば夕食と朝食どちらも味わってほしいです。種類も多いですし、地元の魚もありますし、中には「マンボウ」を使った珍しい料理もありました。夕食を摂りながら見る夜景も素敵ですし、朝日を眺めながら食べる朝食も最高ですよ。
※メニューは季節などにより変更があるかと思います
― 自分も夕食は食べさせてもらったのですが、確かに美味しかったです!
吉田 そして熱海と言えば温泉ですよね。付帯している施設のfuuaには露天風呂がありまして、なんとそこには境界線がないんです。
― 境界線がない?
吉田 自分が浸かっている温泉と、外にある海との境界線が一体化しているように見えるんです。それによって、まるで自分が海の中に入っているかのような体験ができます。あれは絶対に入っていただきたいですね。
― 凄い…聞いているだけで行きたくなりますね。
吉田 そしてホテル周辺の観光スポットとしては、ぜひ熱海城に行っていただきたいです。映画『キングコング対ゴジラ』のクライマックスで、その熱海城を破壊するシーンがあるんです。それがまた素晴らしいシーンで…。ちなみにゲーム本編の中にも、そういった映画にまつわるポイントをいくつか散りばめていますよ。
― 今回、参加するにあたって「宿泊コース」と「日帰りコース」どちらかを選ぶことができるんですよね?
吉田 そうです。でもお金に余裕があるならちょっと奮発してでも「宿泊コース」でご参加いただきたいなと思います。費用に見合うだけのラグジュアリーな体験ができますし、もちろん謎解きのクオリティにも自信があります。そして時間に余裕もできるだろうから観光もしてほしい。それと実は「宿泊コース」でしか体験できない仕掛けも用意しているんですよ。
― そうなんですか!それはゲームを存分に楽しむ意味でも「宿泊コース」で参加したいところですね!
今回しか見ることのできないゴジラが登場!
― ゲームの内容についても詳しく教えてください。
吉田 ちょっと待ってください!まずこれは「ゲーム」ではなく、本気の「戦い」です(笑)!参加者の皆さんには、本気でゴジラと戦ってほしいなと思っています。それくらい臨場感のある作品になっているので。
― それは失礼しました(笑)。プレイ人数は最大4名となっていますが、オススメのスタイルはありますか?
吉田 これは自分達がどんな風にゴジラと戦いたいかによりますね。物語と謎にじっくり向き合うなら1人がいいかもしれませんし、濃密な時間を過ごしたい方には2人がオススメです。そしてワイワイ楽しみたい方は3〜4名での参加がいいと思います。
― 作っていく中で特に意識した部分はどこですか?
吉田 何時間もかけて物語を進めていく中で、少しずつゴジラが自分達に迫ってくる緊張感をどうやって演出していくのかを強く意識しました。実際どんな感じでゴジラが迫ってくるのか、どんな演出が待っているのかは、参加してからのお楽しみですが。これはネタバレなので伏せ字にしておきますが、企画の初期段階では最初に●●が●●する予定だったんです。でもそれだと●●になってしまうなということで、最終的に●●まで●●は●●することになりました。
― なるほど!とても考えられた演出ですね!
※ぜひ実際に体験して、感じ取ってください!
吉田 ということで、1回目のテストプレイを経てストーリーは全部変更することになりました。あと、謎解きも楽しんでいただきたいのですが、ホテルの空間も味わっていただきたいので、そこのバランスも意識しました。謎解きを楽しみつつもホテルを満喫できるような、ちょうどいいところを探しました。
― ゴジラファンを唸らせるような演出も用意しているんですか?
吉田 実はですね、このイベントでしか見ることのできないゴジラが登場します!公式ホームページにも掲載されているのですが、なんと今回のために特別にモデリングしていただきまして。まずベースとなるのは映画『キングコング対ゴジラ』に登場するゴジラですが、VSシリーズのゴジラの身体や顔を、背びれはミレニアムシリーズのゴジラなどを参考にさせていただいています。
― SNSではファンからの反響もありましたね。皆さん「このゴジラは何だ!?」と驚かれていました。これはゴジラファンとしても一見の価値がありますね。
吉田 このゴジラと自分達が対峙するわけですから、これは興奮できると思いますよ!プレイ中、皆さんに見ていただく映像については過去の全てのリアル脱出ゲームの中で一番の力作かもしれません。期待してください!
― 最後に、これを読んでいる皆さんへ向けて一言お願いします。
吉田 今回の作品は熱海でしか開催できないものになっています。最高のシチュエーションと、最高の物語体験を用意することができましたので、謎解きファンの方もゴジラファンの方も絶対に楽しめます。こんなご時世ではありますが、お越しいただけたら嬉しいです!
PLOFILE
吉田 隆之 (よしだ たかゆき )
SCRAPコンテンツディレクター。
主な担当作品は『ドラゴンクエスト 大魔王ゾーマからの脱出』『リアル潜入ゲーム シリーズ』『夜の魔王城からの脱出』『あるラジオ放送局からの脱出』など。
インタビュー・文
青木たつや
2012年から様々なリアル脱出ゲームのMCを務める現役最ベテラン司会者。SCRAPファンクラブ「少年探偵SCRAP団」の団長でもある。
©SCRAP TM & © TOHO CO., LTD.