「今後、困ってしまうくらい新しいことに挑戦している」
コナン脱出を担当するディレクターが語る「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」
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公開日:2018/07/10
いよいよ6月29日より、リアル脱出ゲーム×名探偵コナン「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」が開催される。
今年で6年目となった大人気作品『名探偵コナン』とのコラボレーション公演。常に新しい挑戦を続けてきたコラボだが、今年はよりさまざまな趣向を凝らした挑戦を行っていると、ディレクターの西澤匠氏は語る。
そんな「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」の魅力を西澤氏に聞いた。
――リアル脱出ゲーム×名探偵コナン「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」開催の経緯について、お教えください。
ディレクター 西澤匠(以下、西澤) 『名探偵コナン』とリアル脱出ゲームのコラボは、今年で6年目となるのですが、その年に公開されている映画のテーマを意識して公演をつくることもよくあります。
最近のコナン映画は、一キャラクターをピックアップして盛り上げる方向となっていて、今年の映画は『名探偵コナン ゼロの執行人』ということで、公安である安室透を中心に据えた公演にしています。
”百億の男・安室透”というビッグウェーブに乗らせていただくしかないな、と(笑)。
――「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」は、どういった内容になるのでしょう?
西澤 これまでのコナン公演では、例えば遊びに行った先で事件が起こり、それを解決していくといったように、ポジティブな状況からネガティブな状況に陥るようなストーリー設定が多かったです。
ただ、今回は安室透の持っている”公安”という属性に注目しました。
というのも、国の諜報機関である「CIA」や「MI6」というのは、その単語を聞いただけでどこかワクワクするんですけど、「公安」と聞いてもみんなあまりテンションが上がらないんですよね(苦笑)。
「MI6」といったら『007』のジェームズ・ボンドがいたりするけれど、日本の公安については、公安をテーマにしたエンタメ作品がそんなに多くないこともあって、いまいち理解されていない。
そんな、ある意味ニッチな単語である「公安」をテーマに据えて、コンテンツを考えてみたら面白いと思ったんです。
実際に、公安の知識を持っている元警察官の方へインタビューを行ったんですけど、その時、今回の公演の全貌が見えた気がしました。
もちろん、詳しい情報を教えてもらうわけにはいきませんが、公安は警察の中ではどういう立ち位置で、どういった人が採用されるのか……そういった知識を踏まえて、「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」は作っているので、“公安”という存在についても勉強になる公演だと思います。
――「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」では、公安への協力者を採用するための試験が実施されるということでしたね。
西澤 リアル脱出ゲーム×宇宙兄弟の「宇宙飛行士選抜試験」など、僕が試験系コンテンツを作るのにハマっていたこともあって「公安最終試験」という形にしました。
今までは毎回、コナンたちと一緒に謎を解くという形が多かったんですけど、今回は作中のキャラクターである安室透から問題を仕掛けられる……という展開も面白いかなって。
まぁ、結局は試験がジャックされちゃうからコナンや安室と協力するんですけどね。笑
■“6人で協力すること”を突き詰めた
――これまでのコナン公演とは一味違った内容ということですが、ほかにも新たなポイントなどはありますか?
西澤 いっぱいあるんですけど……。
メインとしては、最も協力し合えるホール型公演にしたい、という思いがありました。
実は最近、「リアル脱出ゲームでは、4人でチームを組むと一番チームワークが良くなる」という説があるんですよ(笑)。最近の公演も、4人一組というのが多いんです。
でもだからこそ、改めて6人一組である必要性を追求してみようと思ったんです。
心理学などでも、「同じ場で協力できる人間の上限は6人である」といった研究結果が出ているそうなんです。
7人を超えると、4人と3人のグループに分けたほうが議論は進む、と言われているんです。
であれば、協力できる最大限の人数である6人で、ちゃんと協力しないと解けないようなコンテンツを作ってみよう、と。
そうした中で、今回は3つくらいの新システムをこっそりと導入しています。
わかりやすい例でいうと、「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」では、リアル脱出ゲームで定番の「チームメンバーと分担して小問を解く」というパートはありません。
小問を手分けをして解くというのは、本当の意味で協力しているのか? という風に思ったからです。
――「6人で協力する」ことを突き詰めたということですが、苦労したところはどんなところですか?
西澤 一番大変だったのは、チームメンバーの状況理解のスピードを統一させないといけない、ということでした。
「今何をするのか」だったり、自分の役割を理解できなかったりすると、置いていかれることになってしまいますよね。
「安室透によるガイドボイス」と呼んでいますが、今回はゲームの進行を基本的に安室の音声がやってくれる仕組みを作っています。文字情報だと理解するスピードに差が出てしまう。
でも、音声であれば、6人みんなが同じ情報を同じスピード感で共有できる。
また、必然的に安室の音声を収録する時には、すべての台本が出来てないといけません。
なので、いつもの公演より早いタイミングでアフレコをしなければいけなかったので、その進行スケジュールでもビクビクしていましたね(苦笑)。
――これまでリアル脱出ゲームを楽しんできた人にとっても、目新しい公演になりそうですね。
西澤 普段のリアル脱出ゲームとは、少し毛色が違うものになっている感じはします。
ほかにも、リアル脱出ゲームをプレイした後、簡単なウェブ試験を受けると、それぞれの個人成績が出るシステムを用意しました。
これは、みんなでの「脱出成功/失敗」以外に、プラスしての判断基準があるとより面白いと思ったからです。
各個人それぞれの頑張りや能力をちゃんと評価できる仕組みを導入してみよう、と。
公演終了後にウェブから10分間のテストを受けると、自分の個人成績が出るようになっています。
「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」を終えて、チームのみんなと打ち上げをしている時なんかにアフターコンテンツとして楽しんでもらって、もう一回公演を見直すきっかけであったり、話のタネになってもらえたら良いですね。
――以前のインタビューで、西澤さんは「何の挑戦もないコンテンツはやらないっていう風には決めてます。」(過去インタビュー記事はこちら)とおっしゃっていますが、今回は相当な挑戦が盛り込まれている?
西澤 今までのコナン公演では、作品のキャラクターであるコナン君本人がフルボイスで謎を解説することであったり、子供も楽しめるように公演で使う装置を視覚的に趣向を凝らしてみたりと、いろいろな挑戦をしてきました。
ただ、そういう意味で「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」は今後、困ってしまうくらい新しいことに挑戦しているので期待してもらいたいですね。
■“名探偵コナン”らしさとは何か?
――反対に、西澤さんはこれまでのコナン公演ですべてディレクターを担当されていましたが、コナン公演を作る上で一貫して大切にしていることはなんですか?
西澤 コナン公演はホール型の全国公演ということで、開催する施設といったハードが変わりにくいコンテンツなんです。
ほかのコラボでは特殊な会場やそれに合わせたゲームの仕組み、新しい座組といった公演も作れますが、リアル脱出ゲーム×名探偵コナンの場合、全国のホールで開催できるような形式にしないといけません。
その中で、新しい動きを作れるように、というのは一年中考えています。
また、ほかのコラボ作品ではキャラクターが特殊能力を持っていたり、作品の世界観が特殊だったりしますが、『名探偵コナン』の場合、コナンという頭の良い少年がいるけれど、普通の世の中で事件が起こる、という世界観なんです。
だから、コナン公演は、中心となるキャラクターの魅力を見せられるコンテンツにしないといけないのかな、と思っています。
安室透をフューチャーするんだったら、ちゃんと安室っぽい公演になっていないといけない。
昨年の「ロンドン警視庁(スコットランドヤード)からの脱出」であれば、服部平次とコナンの「ライバル関係」というのが一番のテーマでした。
今年は「公安とは何か?」というテーマを大切にしようと思っています。
だから、コラボ公演における”コナンらしさ”というのは、登場するキャラクターによって変わってくる部分なのかな、と思っています。
――通常のコラボ公演であれば、作品の世界観を楽しめるコンテンツも多いですが、コナンの場合は、より作中のキャラクター性に焦点を当てたつくりとなっている?
西澤 ほかの公演では、「作品に出てくる特殊な道具や能力を使ってみたい!」「あのキャラクターになりたい」ということで、そこをテーマに置くことも多いです。
ただ、反対に作品独自の世界観や能力をコンテンツの軸に置いてしまうと、毎年やっていくのは難しいんですよね。
初めてコンテンツにした時に、ユーザーがやりたいことはめいっぱい盛り込んでしまうと思うので。
『名探偵コナン』は「コナンになりたい!」といった、作品のキャラクターになりたいというよりか、キャラクターと一緒にいたい、という感覚が強い気がします。
なので、一人のキャラクターを中心に据えたら、SCRAP側がそのキャラに沿ったゲームの設定を持ち込んで作れるということで、作りやすいコンテンツだとも思います。
■王道と新しさが求められる、リアル脱出ゲーム×名探偵コナン
――2013年より毎年恒例となっているコナン×リアル脱出ゲームですが、SCRAPにとって“コナンとのコラボ”はどういった作品と考えていますか?
西澤 リアル脱出ゲームのファンは一定層いてくれていますが、ここ2〜3年は「コナン公演には絶対行く!」という、リアル脱出ゲーム×名探偵コナンの固定ファンの方も生まれ始めているように感じます。
SCRAPが主催する公演の中で、『名探偵コナン』とのコラボ公演は毎年一番動員数の多い公演でもあります。
だから、すごく尖ったことをやってもダメだし、毎年同じことをやっても飽きさせてしまう。
王道の楽しさを残しつつ、毎年何か新しさを作っていけないといけない公演となっています。
――「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」に参加するにあたって、しておいたほうがいい下準備などはありますか?
西澤 やはり映画『名探偵コナン ゼロの執行人』は見たほうが良いですね。まず、安室がとことん格好良い。
それと映画を見れば、今回の公演でも重要となる「協力者」という存在がどういったものなのか、公安という組織がどういった組織なのか、といったことがはっきりわかります。
そうすれば、「あの“協力者”という存在に、自分がなれるの!?」といったワクワク感が増えると思います。
もし映画に行く時間がない人は、wikipediaで「公安警察」という項目を読んでおくだけでもしておいていただければ(笑)。
――今回は、オリジナルグッズも豊富なラインナップですね。
西澤 「極秘任務付きチケット」なんかは、この中に極秘ミッションが入っていて、事前に購入していただけた人だけが楽しめる謎が入っています。
この「極秘任務付きチケット」にも印刷されているロゴは、ゲーム中に出てくる「Project ZERO」のロゴなんですよ。
つまり、公演のタイトルロゴとかではなくて、コナンの作品の中で使われているようなイメージでデザインチームに作ってもらいました。
『名探偵コナン』の世界にあるものがグッズになった、というイメージで、より楽しんでもらえるかなと思っています。
――最後に、楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします!
西澤 いろいろ話しましたが、最終的には来て楽しいかどうかだと思うので、ぜひ「公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出」を楽しんでください!
ここまで安室透の声が聞こえる公演というのは、今後なかなか作れないと思います。
「謎解きって難しいんでしょ?」と不安に思っている人も、耳元で安室がサポートしてくれるので安心してください(笑)。
コナンが「はい、チーズ!」と言ってくれたり、安室にシャッターのカウントダウンをしてもらえるフォトスポットも用意しているので、そういった部分でも『名探偵コナン』ファンの方に楽しんでいただきたいですね。
――ありがとうございました!
リアル脱出ゲーム×名探偵コナン『公安最終試験(プロジェクト・ゼロ)からの脱出』
【公演スケジュール】
東京:原宿ヒミツキチオブスクラップ 6/29 – 10/28
大阪:大阪ヒミツキチオブスクラップ 7/6 – 10/28
名古屋:ナゾ・コンプレックス名古屋 7/27 – 10/28
札幌:アジトオブスクラップ札幌 8/3 – 9/30
香川:シンボルタワー 展示場 8/4 – 8/5
静岡:マリナート 8/25 – 8/26
徳島:アスティとくしま 第6会議室 8/25 – 8/26
鳥取:米子コンベンションセンター BIG SHIP 国際会議室 9/15
新潟:日報ホール 9/21 – 9/24
神奈川1:日石横浜ホール 9/21 – 9/23
熊本:SECOND SIGHT 9/21 – 9/24
千葉:市川市文化会館 9/29 – 9/30
京都:KBSホール 10/5 – 10/7
大分:TOSテレビ大分3階大ホール 10/5 – 10/8
群馬:ベイシア文化ホール 10/6 – 10/7
広島:イオンホール 広島祇園 イオンホール 10/6 – 10/8
愛媛:エミフルMASAKI エミフルホール 10/13 – 10/14
福岡:西鉄ホール 10/16 – 10/23
埼玉:TOIRO 10/20 – 10/21
岡山:倉敷市民会館 展示室 10/20 – 11/03
富山:サンシップとやま 10/26 – 10/28
茨城:つくば市ふれあいプラザ 10/27 – 10/28
兵庫:ポートオアシス 10/27 – 10/28
神奈川2:アジトオブスクラップ横浜 11/2 – 11/25
山梨:山日YBSホール 11/2 – 11/3
宮城:イベントホール松栄 11/2 – 11/4
滋賀:大津市民ホール 11/3 – 11/4
沖縄:RBCホール 11/23 – 11/25
青森:リンクステーション青森 11/23 – 11/24
長崎:長崎新聞文化ホール 11/30 – 12/2
鹿児島:詳細後日発表
(インタビュー/須賀原みち・撮影/坪井信乃)