SCRAP史上初の謎解き×科学実験……唆るぜこれは! 『石の洞窟(ストーンケイヴ)からの脱出』コンテンツディレクター・荒浪祐太インタビュー
公開日:2020/01/21
週刊少年ジャンプで連載中の大人気漫画『Dr.STONE(ドクターストーン)』は、科学史200万年を駆け上がる前代未聞のクラフト冒険譚。2019年に放映したアニメも大好評で、すでに2期の制作が決まっています。そんな『Dr.STONE』とSCRAPが初コラボ! 謎解きの過程で科学実験を行うという、これまた前代未聞の公演となっているようで……? コンテンツディレクターの荒浪祐太さんに、制作の裏話を聞きました。
謎の光線により全人類が石化してから約3700年。文明が滅んだ石の世界(ストーンワールド)で誰よりも先に石化から目覚めた科学少年・石神千空(いしがみ せんくう)は、科学の力で仲間を蘇らせ、0から文明を作り出していく。石器時代から現代文明まで、科学史200万年を駆け上がる前代未聞のクラフト冒険譚。
3700年後の世界で、科学を駆使して脱出を図る
ライター:『石の洞窟(ストーンケイヴ)からの脱出』はどんな公演ですか?
荒浪:プレイヤーは、2020年に石化してしまった現代人です。主人公の千空と仲間たちが探索に来た洞窟に閉じ込められてしまい、そこにあった石像を復活させる。そうして3700年後の世界で蘇ったプレイヤーが、千空たちと頭を絞り、科学の力で洞窟から脱出する……という設定です。プレイヤーは1〜3人で、一斉スタート型ではなく随時入場型となっています。
ライター:ワオ、千空に蘇らせてもらえるんですね! 原作好きにはたまらない設定です。
荒浪:僕も連載開始から『Dr.STONE』を読んでいて、すごく好きで。コラボが決まったときにすぐ「担当させてください」と手を挙げました。
ライター:『Dr.STONE』の魅力はどこにあると思いますか?
荒浪:実際の科学に忠実なところ、でしょうか。僕自身理系なので。はちゃめちゃなところもあるけど、科学や物理の実験やものづくりは現実世界に沿っているので、「身近なものがこんな素材でできるんだ」と勉強にもなりますね。
ライター:好きなキャラクターは?
荒浪:クロムです。科学が大好きで、知識は現代人の千空に負けちゃうけど、頑張って食らいついていく。努力家なんですよね。僕も謎づくりが大好きで、堺谷さんという尊敬する先輩がいて、ずっと背中を追いかけているんです。だから、クロムには近しいものを感じています。
謎解きの過程で、科学実験を行う!?
ライター:本公演ならではの新しい挑戦はありますか?
荒浪:謎解きの過程で、プレイヤーに色んな科学実験をしてもらうことにしました。SCRAP初の試みですね。
ライター:謎解き×科学実験! 唆りますねそれは。ただ、文系には難しそうな気も……?
荒浪:たくさんの人に楽しんでもらいたいので、もちろん知識のあるなしで謎解きに影響がでる、というようなことはないように作っています。また、ゲーム終了後に千空が「あのとき実はこういう現象が起こっていた」と解説してくれるシートを配るので、ゲーム中に起こっていたことの理屈がちゃんと後からも振り返れます。理系の人はゲーム中から「あれはこういう現象で……」と、ちょっとドヤ顔できるかも(笑)。
ライター:公演内でやるのにちょうど良い実験や現象を探すのは大変だったんじゃないですか?
荒浪:そうなんです。目に見えて驚きがあるけど危険じゃなくて、理系の人はもしかすると知っているかもしれないけど「なんだこれか」と思ってしまうようなものではなくて……という絶妙なものを探しました。
あと、新しい挑戦として、液体を使用する場面もあります。普段の公演では使わないんですよ。プレイヤーが途中でこぼしてしまったり手元を濡らしてしまったりと、運営上大変になることが予想されるから。でも、今回はそれがないと実験らしさが出せないので、押し切りました。
ライター:ボツになったものもあったりします?
荒浪:派手な実験って、大体危険を伴うんですよ。ちょっと専門的な話になるんですけど、銀鏡反応やテルミット反応というものがあるんです。現象はすごく面白いんですが、まぁ使用するのが劇薬ばかりで。取り扱う資格を持ったスタッフを配置して、とか考えたんですが、さすがに無理だなと断念しました。やりたかったな……(笑)。
ライター:科学実験のほかに、プレイヤーはどんな体験や感動を得られますか?
荒浪:『Dr.STONE』は近くで採取できるものを有効利用して色んなものをつくっていくシーンが印象深いんですよね。だから、洞窟内を探索するステップも少し入れています。
ライター:探索も楽しそう! 原作で、千空が「わからねえことにルールを探す、そのクッソ地道な努力を科学って呼んでるだけだ」と言ったり、千空自身がコハクから「一歩一歩問題解決へと楔を打ち続ける、揺らがぬ信念(が素晴らしい)」と評されたりしていますよね。この姿勢はリアル脱出ゲームに近いものがある気がします。
荒浪:そうですね。設定もつくりやすかったしとても相性のいいコンテンツでした。「謎解きは好きだけど『Dr.STONE』は知らない」という人も、すんなり入り込める公演になっていると思います。
『RED ROOM』を体験してから一週間、ごはんが食べられなかった
ライター:荒浪さんご自身についてお聞きしたいんですが、謎制作における得意分野ってありますか?
荒浪:ひらめきによって手元で組み上がっていく面白さがある立体パズルが好きですね。逆に苦手なのは論理的な平面パズル。あんまり自分の公演で入れないかな。
ライター:「いつかこんな公演をつくりたい」という野望は?
荒浪:ストーリーのない、謎だけで勝負したコンテンツですね。SCRAPは物語体験を大事にしているし、今回のようなコラボも楽しいのですが、僕はひたすら謎をつくるのが好きで……。100万謎(正式名称:『100万円謎解き大合戦!! SCRAPからの挑戦状』。2015年からSCRAPが毎年開催しているオンラインコンテンツ)のようなものをひたすらつくり続けたいです。
ライター:荒浪さんは謎が好きすぎて某大手ゲーム制作会社からSCRAPに転職してきたとか……。気合の入った謎マニアですね。
荒浪:周囲の人全員から反対されましたが、振り切って2年前に転職しました。
ライター:SCRAPの公演には以前から参加していたんですか?
荒浪:そうですね、学生のときからアルバイトしていました。でも、参加回数はそんなに多くなくて、月1くらい。謎を解くのがそんなに得意じゃなくて……頭の回転が早くないし、じっくり考えたいタイプだから制限時間とか言われると焦っちゃって……。
ライター:意外! コンテンツディレクターはみんな解くのが早いと思っていました。
荒浪:ほかのみなさんはそうですけど、僕は苦手ですね。つくるのばっかり大好きで。だからいまは幸せです。
ライター:ちなみに、SCRAPのリアル脱出ゲームで「これはすごい!」と思ったものはありますか?
荒浪:僕の根幹には常に『Escape from the RED ROOM』があります。あれもストーリーがなくて謎の驚きだけで勝負しているコンテンツですよね。そしてその驚きが相当なもので……。転職前だったんですが、『RED ROOM』を体験してから一週間くらいごはんが食べられませんでした。
ライター:なんで??
荒浪:そのくらい衝撃だったんです。「うわー、やられた……」「自分もこういうのつくりたい」って。いつも『RED ROOM』を超える公演をつくりたいと思うんですが、毎回「『RED ROOM』に比べたらまだまだだな……」と悩む日々です。
ライター:謎への愛がすごい……。『Dr.STONE』の世界ではさまざまな能力やスキルを持った現代人が復活させられていますが、荒浪さんも謎のスペシャリストとして蘇らせてもらえるかもしれませんね。あの世界で謎制作の能力が役に立つかは謎だけど、「いろんな奴がいる=強さ」だから……。
荒浪さんから謎を出題!
ライター:最後に、読者のみなさんへのメッセージをお願いします。
荒浪:「これまでにない科学×謎解きゲーム」と打ち出しているんですが、もしかしたら「科学知識がないと解けないのかな」とか、「科学がある分、謎は簡単なのかな」と思う方もいるかもしれません。でも、その点は安心してください。
科学知識がなくても楽しめるように設計しましたし、謎も解き応えのあるものをいっぱい盛り込みました。なおかつ『Dr.STONE』の世界に入り込んだ気分を味わえる公演になっているので、ぜひ遊びに来てもらいたいです。
ライター:いいですね、すごくちゃんとしているメッセージですね。
荒浪:……あとですね、自分と言えば謎とキャラ付けしたいと思っていまして、今回も謎を制作してきまして……。
ライター:わー! 以前『カトリーエイルと月夜の怪物』のインタビューでも謎を出題されていましたよね。「もしかしたら今回も?」と期待していました。
荒浪:出社中にさっと考えた謎なので、難易度とか考えられてなく、変に難しかったらごめんなさい…。ぜひ挑戦してください!