今年のクリスマスイブから始まる新作ゲーム「ようこそ、ゼペット教授の異常犯罪相談室へ」。これまでにないタイプの新感覚ゲームだそうですが、実は2017年12月に東京ミステリーサーカスでスタートした「歌舞伎町探偵セブン」との繋がりもあるのだとか。
そこで今回、コンテンツディレクターを務める西澤匠さんに、今作の魅力や「歌舞伎町探偵セブン」との関連性についてお話を伺いました。
インタビュー・文 青木たつや
今作は新感覚の推理ゲーム
—まずは今作の具体的な設定やゲーム形式を教えてください。
西澤 いわゆる「ルーム型」と呼ばれるリアル脱出ゲームのゲーム形式で、物語上のキーになるのはゼペット教授という人物です。とある異常な連続殺人事件が発生して、「歌舞伎町探偵セブン」という探偵事務所のメンバーであるプレイヤーが、その捜査を担当することになります。捜査の手掛かりを得るために、異常犯罪のエキスパートであるゼペット教授に話を聞きに行くのですが…このゼペット教授自身も、実は犯罪者なんです。
—犯罪者に犯罪者の話を聞きに行くんですか!?
西澤 そうです。ドラマや映画でよくFBI捜査員が凶悪犯のもとを訪ねて、犯罪者の心理を探るシーンがありますが、アレです。事件を解決するために凶悪犯の話を聞きに行くという。
—それは今までにない斬新な設定ですね!西澤さんが作るコンテンツは毎回なにかしら新しいことに挑戦している印象があります。そういう意味では今回もチャレンジしている部分はありますか?
西澤 これまでも推理系のゲームはいくつも作っているのですが、犯人を探したりトリックを暴いたりするものが多かったんです。でも今回は「どうしてこんな事件を起こしているのか?」みたいな、犯人の動機や目的を紐解いていかないといけない内容です。推理というよりもプロファイリングに近いかな。だから普段のリアル脱出ゲームとも違いますし、推理系のゲームとしても珍しいタイプのものになっていると思います。そういう意味では新しいことに挑戦しているかもしれないですね。
あと今回の舞台はマンションの中にひっそり存在している特殊刑務所という設定なのですが、会場となるリアル脱出ゲーム東新宿店が入っているGUNKANマンションがとてもいい雰囲気でして。今回の設定にピッタリだなと。怪しげなマンションの一室に凶悪な犯罪者がいる、というシチュエーションは物語体験として面白いんじゃないかと思ってます。
—ルーム型ですがプレイ人数が4人という設定も珍しいですね。
(ルーム型公演は6〜10名でプレイするものが多い)
西澤 ゲームのシステム的な理由で4人設定にしたのもありますが、なによりも人数が少ない方が凶悪犯と対峙したときの緊張感が増すんじゃないかなと思いまして。究極のオススメは1人プレイです(笑)。勇気がある人は、凶悪犯と1対1で会話するゾクゾク感を味わってほしいですね。
「歌舞伎町探偵セブン」との繋がりは…
—今作は独立した完全新作のゲームでありながら、実は「歌舞伎町探偵セブン」の続編にもなっていると伺いました。「歌舞伎町探偵セブン」はどのようなゲームだったのでしょうか。
西澤 プレイヤー自身が探偵事務所の一員になって、歌舞伎町で発生した事件を捜査する体験型のゲームです。実際の歌舞伎町で事件が起こるので、プレイヤーは街を歩きながら本物のキャバクラやタトゥーのお店に入って聞き込み捜査を行い、事件を解決に導いていくという内容でした。それをストーリー毎に全部で6コースに分けて開催していました。
—6コースの中で西澤さんはどの部分を担当されていたのですか?
西澤 全体の監修をしつつ、自分でも3コースほど作りました。6つの物語は同じ世界の中で繋がっているので、設定などにズレがないかチェックしながら完成させました。ゲーム内容としては歌舞伎町にあるお店を10店舗ほどお借りしてチェックポイントとして使わせていただいたりして、なにかと壮大でした。本物のお店を使うことで物語とリアルが繋がったゲームになったと思いますし、そこが「歌舞伎町探偵セブン」の一番面白いところだったと思います。
—そんな前作の「歌舞伎町探偵セブン」からもうすぐ丸4年が経ちますが、今回こうして続編の物語を作ることになった経緯を教えてください。
西澤 前作は「歌舞伎町探偵セブン」の一員になるための試験を受けているという設定でした。6つのコースをクリアすることで、メンバーとして認められるという。そしてメンバー入りした後、7つ目の物語に挑戦してエンディングを迎える計画があったんですが… 残念ながらそれをお届けできずに止まってしまっていたんです。
—ようやく「歌舞伎町探偵セブン」のメンバー入りができたのに、その続きがプレイできていなかったわけですね。
西澤 そうなんです。まずは6つのコースを1年半くらい開催して、それから続編となる7つ目のコースを発表する計画で動いていました。7つ目のコースも歌舞伎町の様々な店舗を巡りながらプレイする内容にするつもりだったんです。ところが大人の事情がありまして…。
—大人の事情…。
西澤 お店を長期間お借りすることが難しかったり、多くのキャストに毎日ずっと稼働し続けてもらうことにも限界が出てきたんです。つまり7つ目のコースはこれまでと同じ形式では作れなくなってしまいました。
でも「歌舞伎町探偵セブン」の最大の魅力は実際に街を歩いたり、本物のお店に入ってキャストと会話をすることです。それなのに「歌舞伎町を使うこと」と「お店でキャストとコミュニケーションが取れること」という武器を失ってしまった。さあ、どうしよう… という話になり、計画を白紙に戻して街歩き以外のゲーム形式を模索することになりました。
—それはいつ頃ですか?
西澤 2019年だったと思います。そこから色々なアイデアを試しました。例えば「10分間探偵」というタイトルで、10分間だけ事件現場に入ることができるというゲームを考えたのですが、テストプレイであまり手応えを感じることができなくてボツになったり。あとはホール型での開催も検討しましたが、あまりしっくりこなかった。そうした中で、最終的に今回のゲーム形式にたどり着いたんです。実は2020年の1月頃には何度かルーム型でテストプレイもしていまして、これでようやく7つ目のコースとして発表できるかもしれないぞ… と思っていたのですが、そのタイミングでコロナ禍になってしまいました。ご時世を考えたときにルーム型の新作を今このタイミングで出すべきなのかと。さらに同時に会社的にもオンラインコンテンツを増やしていこうという流れになったので、そこで制作が再び止まってしまいました。
—なるほど!
西澤 コロナの影響もあって1年ほど制作がストップした状態だったのですが、今年の5月頃から、改めてコロナ渦が明けたらすぐにでもスタートできるように準備を進めることになり、今回やっと発表できたのが今作というわけです。
—実はずっと試行錯誤しながら制作をしていたんですね。しかし2019年10月には「続編の開催時期未定」というお知らせも出ました。楽しみに待っているファンからの声もありましたか?
西澤 ありがたいことに「続編まだですか?」という声はよく耳にしましたね。でも具体的にいつ開催できるか決まっていない状態で「作ってますよ!」と無責任な返事をするわけにもいかず… という状況でした。
—コロナ渦でリアル脱出ゲームもオンライン公演が増えましたが、続編をオンラインで作ることは考えましたか?
西澤 もしも今回のゲームをオンライン化するなら… ということは考えました。でもやっぱり「歌舞伎町探偵セブン」のいいところは実際にお店に入れる体験や、登場人物とコミュニケーションが取れることなので、それをオンラインで作るのは難しいなと判断しました。それに今回のルーム型がベストなゲーム形式だとも思っていたので。
—今回のルーム型こそ、前作の周遊型に匹敵するくらい面白いという手応えがあったわけですね。
西澤 その可能性を秘めていると思います。
「歌舞伎町探偵セブン」の今後
—今作は「歌舞伎町探偵セブン」を未プレイの方でも楽しめる内容でしょうか?
西澤 もちろんです。前作と世界線が繋がっているので、これまでのファンが楽しめることはもちろんですが、そもそも今回は凶悪犯と会話しながら推理をしていくという単体で成立するゲームを作りたかったので、今作から入っても何の問題もなくプレイできます。それに前作でようやくプレイヤーは「歌舞伎町探偵セブン」のメンバー入りを果たして、今回がその初仕事ですから、物語的には全員が同じスタートラインで体験できるんじゃないかなと。
—ちなみに「歌舞伎町探偵セブン」を予習復習する方法はありますか?
西澤 「歌舞伎町探偵セブン」のゲームブックが発売されているので、それを読むといいかもしれません。歌舞伎町でやっていたゲームを丸ごと本で遊べるので、予習や復習にうってつけです。今回から入るプレイヤーはまず今作を体験してみて、それからゲームブックを読むのも面白いと思いますよ!
—開催まであと1ヶ月ほどですが、制作の進捗はいかがですか?
西澤 それ聞いちゃいますか(笑)?2020年にテストプレイしていたんだからもうとっくに完成しているだろうと思うでしょうけど、1年くらい寝かせてみたら色々と修正するポイントが出てきまして。それで結局ほとんど全部を作り直しているので、まだテストプレイしながら調整を繰り返しています。
—全部作り直している… すごい話ですね。ちなみに今回で「歌舞伎町探偵セブン」のストーリーは完結するんですか?
西澤 その予定ではあったのですが、実はまだ回収できていない前作の伏線や、登場していないキャラクターがいるんです。なので、もう少し他のストーリーも作りたいと思っているのですが… あとは今作がどれくらいヒットするかにかかっているかもしれませんね…。
—場合によっては次回作が出せない可能性もあると… 。ぜひ多くの方に体験してほしいですね。では最後に、これを読んでくださっている皆さんに向けて一言お願いします。
西澤 「歌舞伎町探偵セブン」ファンの皆さん、お待たせして申し訳ございません。やっと新作をお届けできることになりました。前作の記憶を思い出しながら、ゼペット教授との対面を楽しみにしていてください!
そして今作からプレイする皆さん、今作はこれまでのリアル脱出ゲームや「歌舞伎町探偵セブン」とは全く違うタイプのゲームです。過去の知識や経験値に関わらずお楽しみいただけますので、安心してお越しください。会場でお待ちしています!
PLOFILE
西澤 匠 (にしざわ たくみ)
SCRAPコンテンツディレクター。
主な担当作品は「名探偵コナンシリーズ」「ONE PIECEシリーズ」「逆転裁判シリーズ」「ガラスの靴は100万回盗まれる」など。