はじめまして。記憶の扉のドアボーイ、山下メロです。「平成レトロ」というジャンルを提唱しました。
「平成レトロ」がネットの流行語大賞にノミネートされるなど定着するよりも前に、懐かしい平成をテーマにしたイベント「平成レトロDEあそばNIGHT」をSCRAP様と開催したことを、昨日のことのように今はっきりと思い出します。
そんな昭和、平成のレトロを愛する私の元に届いた「山根家のタイムカプセル」。プレイヤーは鍵屋さんという設定で、タイムカプセルは鍵つきのチェーンで閉ざされており、それを開けてくださいと依頼を受けるところから物語がスタートします。記憶を閉じ込めたタイムカプセルを開ける。それは自分の肩書きである「記憶の扉のドアボーイ」にも通じるものがあります。
そしてこのタイムカプセル、昔カセットテープを入れて意味もなく持ち歩いていたハンドル付きの缶ケースのようで懐かしいです。テープを聴けるわけでもないのに公園に持って行ったり……謎の「手提げカバン持ちたい欲求」がありました。
デザインも、ファンシーな観光地みやげキーホルダーを入れて学習机の引き出しに入れていた「お中元で届くクッキー缶」そのもの。しかし、なんなんでしょう、あのお中元クッキーの人気のかたより。色味の無いクッキーが余りがち。そしてクッキーを食べ終えたと思ったら、さらに下にもう一段あるという謎のサプライズ……と喜んで下の段を見たら、すでに人気のクッキーが数枚減っている……そんな家族の日常を思い出してしまうリアリティーが、今回の山根家の謎解きにも関わってくるのです。
タイムカプセルという装置を使うことで、現在と過去をうまく接続してくれており。謎を解いていくと、懐かしい「あるあるアイテム」と出会うことができます。特に学習ノートや卒業アルバムなどは、細かい部分をしっかり作り込んであり、それを見ているだけで楽しいです。謎解きを忘れて、ついついじっくり眺めてしまうほど。
しかも、そうやって引き込まれてアレコレ見た記憶が、後々の謎解きでサブマリン特許のように浮かび上がってきたりするので、それがまた嬉しかったり。時間制限があると謎解きに集中してしまいがちですが、これは時間制限がないので、むしろ心ゆくまで世界観を楽しむことができます。
実際に学生時代に経験したことを追体験するような仕掛けもあります。星座早見盤なんて何年ぶりに触ったことでしょうか……いまや星座早見盤を使わずともネットで検索したり、天体アプリが無料で使えたりしますので、存在すら忘れていました。こういった面倒な作業をさせられるような状況すら、もはや学生に戻ったような気分を盛り上げてくれます。
このような過去の要素からの謎解き、そして連絡はスマホのLINEという時代を超越した展開。タイムカプセルによって「不便な過去」と「便利な現代」を行ったり来たりする。この体験は新鮮でした。
鍵開けの依頼から、山根家の謎に巻き込まれ、そして残された過去の痕跡から手がかりを探していく。当時を知っている世代には懐かしく、知らない世代には新鮮なレトロ体験型の謎解き。自宅でじっくり遊べますので、ぜひあの頃へ戻ってみましょう。
ライター:山下メロ 撮影:オカノイズミ
■山下メロプロフィール
1981年 広島で生まれ、埼玉県加須市で育つ。記憶の扉のドアボーイ。
平成が終わる前から「平成レトロ」を提唱。平成初期~前半を中心としたバブル~1990年代特有の文化の保護を訴える。情報やアイテムの保護活動・発信を続け、2020年にはTBS『マツコの知らない世界』にて「平成レトロの世界」が実現する。
また、1980年代~バブル時代に日本中の観光地の土産店や施設の売店で販売されていた子ども向け雑貨みやげ「ファンシー絵みやげ」についても研究。日本全国で保護活動を行い、これまで調査した土産店は約6000店、保護した個体は25000種におよぶ。そのフィールドワークにおける出来事や成果を各メディアで発信している。
著書に『平成レトロの世界 山下メロ・コレクション』(東京キララ社)、『ファンシー絵みやげ大百科 失われたバブル時代の観光地みやげ』(イースト・プレス刊)がある。
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