Mystery for You 多すぎる犯行予告からの脱出 第3章-3正解
《解除コードメモに「あつものにこりてなますをふく」とメモしましょう》
導いた解除コードを入力したとほぼ同時に、また非通知の着信が来た。ここまで来たらもう誰からかは想像がつく。
「いやぁ、おみごとおみごと」
予想通りの耳障りな声の主に対して、あなたは呆れたように言い放つ。
「おい、そろそろ終わりにしてくれないか、こっちはもうへとへとなんだ」
「知らないね。でも、僕らの仕掛けた7つの装置、全部解除しちゃったね!」
「なんだその口ぶりは! まだ何かあるのか!?」
「ふふ、外に出て空を見上げてごらん!」
あなたは出入口のロックを解除し外に出て、夜空を見上げる。するとそこには、昼に画面越しで見たときよりも明らかにこちらに近い…いや、地上に向けて迫ってきている飛行船があった。
「実はね、君たちが必死になって解除していたその装置、解除されるたびに飛行船の制御プログラムに影響を与えてたんだ!」
「は?」
「ほら、制御がきかなくなってどんどん落ちてきてる」
「ちょっと待て、そのままにしたらこの一帯が危険じゃないか!!」
「そうだよ」
こちらの焦りなどお構いなしに、あっけらかんとした答えが返ってくる。
「ふざけるな! 止めろ!!」
「もう、君たちが装置を全部解除しちゃったから、無理~♪って言いたいところだけど、ひとつだけ方法があるよ」
「何だと!? あるなら教ろ!!」
藁(わら)にもすがる思いで、あなたはこの事件の張本人に向かって言葉を放つ。
「それが人に物を頼む態度なの?」
「くっ…」
携帯を持つ手に力が入る。今ここで大事なのは自分のプライドではない。何よりも優先すべきは市民の安全だ。
あなたは覚悟を決めて口を開いた。
「…すまない…教えてくれないか。その…飛行船の降下を止める方法を…
教えて…ください」
沈黙が訪れ、フッと鼻で笑ったような音が聞こえた。あなたの脳裏には犯人のあざ笑う様子が浮かんだが、携帯を持つ手と逆の手を握りしめ耐える。すると満足そうに犯人が話し出した。
「良く出来ました~。じゃあ特別に教えてあげよう。飛行船の制御を取り戻す方法は謎を解くだけだよ! 多分この後に連絡が入るから、それをよく聞いて謎が解けたら制御可能になるよ!」
この期に及んで何をふざけているのかと、呆れて声も出ないあなたをよそに、犯人は続ける。
「でもね、1個だけ言っておくと、謎を解いたら制御はできるけど、そうすると飛行船の中にある黒い塊が地上に向かって沢山落ちてくるから、そこから先は警察の人が何とかしてね?」
「おい!! 黒いものって何だ!?」
「空中にいるときに触ると危ないもの! 地面に落ちたらそれはもう…」
「何を言っている!?」
「だから、リーダーのあなたに与えられた選択肢は2つ。このまま飛行船を不時着させて会場をつぶすか、得体のしれない黒い沢山の何かを降らせるか。選んでいいよ」
八方ふさがりのこの状況に言葉を失っていると、監視室に置いてきた後輩が慌てて駆け寄ってきた。
「先輩! 県警本部から連絡です!!」
「ほら、お呼びだよ? じゃあ、後はがんばって! ばいなら~」
「お、おい!!」
またしても一方的に通話を終了され、ひとまずあなたは後輩に向き合った。
どうやら、犯人の言っていた通り、飛行船が制御できなくなりこのエキスポ会場に落ちてしまうかもしれないようだ。また匿名で飛行船の座席の足元を見ろと連絡が入ったそうで、機内を探したところ、謎の紙が1枚と入力用の端末が置かれていたそうだ。残された時間はそんなに長くない。
飛行船が地上に落下したら、乗っている人たちも自分たちも、ひとたまりもないだろう。犯人が言っていた黒い塊の正体も不明だ… だが、現段階で確実に危険であることを見逃すことは出来ない。
あなたは覚悟を決めて謎に挑むことにした。