「拍手」の答えを導けたとき、遥か昔の記憶がよみがえった。
僕はこのサーカスに来たことがあるのかもしれない。
僕は父の腕の中、兄は母と手をつないで。
これは、両親が事故に遭う直前の記憶だ。
兄も僕と同じように、子どもの頃のことを思い出してこのサーカスを訪れたのだろうか。
　　　　　　　
そんなことを考えながらテントの中にいたピエロにキーワードを伝えに行く。
そういえば兄はピエロのような人だった。
陽気な性格で周りの人をいつも笑わせてくれた。
僕とは正反対だったが、自慢の兄だ。

「拍手」が無事正解だったのでチケット代の半額、2500円をピエロに払った。
残金は…帰りの電車賃くらいはあるな。

ほっとひと息ついていると、ピエロはチケットではなく封筒を僕に渡した。
何だ…？ この中にチケットが入っているのか？
「あの、これは？」
ピエロは何も答えない。
そのとき、僕の携帯電話が鳴った。
ピエロが「しー！」というポーズでこちらを見る。
そうだった、マナーモードにしなくちゃ…。
携帯を開いてみると、1通のメール。
僕が受けた大学からだ。
「入学金の振り込みを確認しました」
え…？ 僕は入学金なんて、振り込んでないぞ！
まさか、兄が…？
ピエロが、「早く封筒を開けろ」というようにジェスチャーをする。
訳がわからないが、僕はひとまず封筒を開き、チケットに書かれている座席についた。

赤い封筒を開こう