あなたは削除用のパスコードを入力した。

「データベースからデータが削除されます。本当に削除しますか？」

あなたは迷いなく「YES」を押した。
これを削除すれば、しばらくの間ゾンビたちは守られる。しかし、一度開発できてしまった物質だ。
数年もすればまた同じようなものが開発され、ふたたびゾンビは存亡の危機に瀕するだろう。

そのとき、窓ガラスをバンバンとたたく音がした。窓の外を見ると、先ほど助けてくれたゾンビがいた。

「おい、あんた大丈夫か？ ゾンビ発作起こしてないか？」

ゾンビが窓を叩く様子はなかなかに迫力のあるものだったが、もう怖くはなかった。あなたが少し馴染んできた声帯を震わして「大丈夫だ」と答えると、窓の外のゾンビは安心したように微笑んだ。

「もうこの家にはいられないな …」

外に出て彼と合流したあなたは、そうつぶやいた。すると、

「いっしょに俺たちゾンビの楽園に行かないか？ 人間たちに追われて住処を失ったゾンビたちが、廃遊園地に集まって隠れ住んでるんだ。なかなかに楽しい生活だぜ」

あなたはそう話す彼の腐った顔を見て少し考えた。いままでゾンビを迫害していた自分が、そんなところに行ってよいのだろうか？ そもそも隠れ住まなければならない原因を作った自分に、ゾンビとして楽しく暮す権利があるのだろうか？

… いや、だからこそ行こう。行って、いずれやってくる人間たちとの戦いに全力で立ち向かおう。自分がA-Zu であったことは、そのとき大きな力となるはずだ。いままでしてきたことの償いとして、これからはゾンビたちを全力で守ろう。そう思ったあなたはうなずき、彼と一緒に廃遊園地へと向かうのだった。

「あるディストピアからの脱出」
謎制作：櫻庭史郎
制作進行：来栖由佳
謎監修：久留島隆史
デザイン：長藤舞
校正：伊藤紘子

「Mystery for You」
企画/制作：SCRAP
プロデューサー：きださおり　田口正也
サービス運用：鈴木ひかる　髙波由希帆　来栖由佳
広報：丸山日登美
パッケージデザイン：加藤咲
システム：株式会社メタップスペイメント
エグゼクティブプロデューサー：飯田仁一郎
製作総指揮：加藤隆生