Mystery for You あるアイドルグループの解散 エンディング
「国民的アイドルグループ TATSUMAKI 本日ついに解散!」
楽屋に入ると、そんな見出しが踊るスポーツ新聞がテーブルに置かれていた。
しかし、どの新聞も祝いムードにあふれていた。これまでお世話になった人たちからの労いのコメントが載っている。
楽屋の中には入りきらないほどの「祝! 解散」と書かれた祝い花が置かれ、花の香りでむせかえりそうなほど、香りが充満している。
「うぃー」
いつもの調子でユウヤが楽屋に入ってくる。
「うぉー、すげぇ。全新聞俺たちが一面じゃん! こんなこと、国立競技場のライブ以来だな!!」
お前が堅尾に暴力振るったときも、コウジがクスリで捕まったときも、全紙一面で伝えてたけどな、と思ったが、言葉を飲み込む。
「オッス」
いつもの調子でコウジが楽屋に入ってくる。
「楽屋…狭くね?」
「まぁいいじゃん。こういう日だし」
「…ま、そうだな」
「お、一面じゃん」
コウジが新聞を手に取る。
ハッと、俺は新聞が置かれていたテーブルに目を向けた。
しかし、そこにいつもの封筒はなかった。
俺は、自分の選択が間違ってなかったんだと胸をなでおろし、ユウヤとコウジの話を片耳に聞きながら、最終回の番組の台本に目を通していた。
あの日、原因は「自分と向き合っていなかった」ことに気付いた俺は、「シンゴ」と自分の名前を入れておまじないをかけた。
ユウヤのため、コウジのため、グループのため、事務所のため、ファンのため…。
前回の解散は、自分をないがしろにしてきたことの結果だったのだ。
おまじないのあと、国立競技場でのライブ直前の日に戻っていた。
ライブ前、2人に対し、
「2人の夢を応援したい。だから、ライブが成功したら、ちゃんと3人で解散のスケジュールを立てよう。このグループが好きだから、綺麗に終わらせたいんだ。」
と伝えた。
2人は驚いた顔をしていたが、すぐに納得し、「わかった」と答えてくれた。
ライブのあと、初めて3人だけで呑んだ。
そのときに、2人はこのグループに人一倍思い入れが強い俺に自分たちの夢を言い出せなかったこと、まさか俺から解散を持ちだすとは思わなかったこと、を聞かされた。
その日はしこたま呑み、また酒に呑まれたユウヤが道端で全裸になり、警察に捕まりそうになったことは3人だけの秘密だ。
それからは色々なことを調整し、3人で顔を合わせて話し合いながら、この日までやってきた。
「…おい、聞いてるのかよ! シンゴ!!」
ユウヤが俺の名前を呼んでいるのに気付いた。
「あ、ごめん。まったく聞いてなかった」
「なんだよー」
「今日の曲のラスト、3人でポーズ決めようぜ」
「そう、俺たちのデビューのときにさ、曲の最後にバレーボールのアタックのポーズしたじゃん?」
「あー、誰にも相談せずにやって、怒られたやつな」
「あれやろうって、コウジと話してて」
「ファンも喜んでくれそうじゃん? どうよ? シンゴ」
「…いいね、やろうぜ」
ドンドン。
楽屋の扉を叩く音がする。
「TATSUMAKIさん収録始まりますー、スタジオへご移動お願いします!」
3人とも、いつも通り「はーい」とキャラに似合わないいい返事をした。
席から立ち上がり、楽屋を出ようと俺が扉を開ける。
「ありがとな」
ユウヤが真剣な顔で言う。
「おう」
照れもあり、軽く返事する。
「俺も。ありがとう」
コウジも真顔で言ってくる。
「おう。じゃあ、俺も」
ユウヤとコウジの顔を見る。
「今までサンキューでーす」
「ちょま! お前、俺のギャグ取るなよ!」
3人で笑いながら楽屋を後にする。
楽屋に残された交換日記の最後のページには「またいつかTATSUMAKIやろうぜ!」というメッセージと3人のサインが書かれていた。
END
おめでとう! 見事に「あるアイドルグループの解散」の謎を解き明かした!
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