横田に地下室の入り口のレバーに辿り着く方法について伝えて数時間後、メールが帰ってきた。

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件名：世紀の大スクープです

教えていただいた通りに、音楽室のオカ犬のポスターが貼られている壁をハンマーで壊してみました。

壊した後に分かったのですが、その壁は隠し扉のようになっていたんです。
まあでも、巧妙に壁に偽装されていたのでわかるはずがありません。
壊して正解でした。

そして壊した先は…ビンゴです。
奥には空間があり緑色のレバーがありました。

まさか4つの教室は実は正方形ではなく長方形で、さらにその教室どうしの間には空間があったとは驚きました。確かに、長方形を4つ並べると隙間ができます。

レバーを引くと床が開き、そこには地下に通じる階段がありました。
僕は勇気を出して地下に向かいました。

そこは真っ白で広い実験施設でした。
実験室内には不気味な機械音が鳴り響いていました。
そしてその実験室の手術台の上には衝撃的な光景が目に飛び込んできました。

なんとそこには人間の言葉を話す犬とワンワンと吠える人間がいたんです。
実験室を調べて後からわかったことなのですが、なんと人間と動物の魂を入れ替える人体実験を行なっていたのです。

あまりにも衝撃的な光景で、いまだに脳裏を離れません。
僕はオカルトの類などは一切信じていませんでしたが、この目で見てしまったので信じざるを得ませんでした。

そして僕は気づいてしまいました。
7つ目の不思議「真夜中に動くオカ犬像の不思議」の正体は、この人体実験の被害者だったのです。
学校の可愛いマスコットであるオカ犬と被験体を見間違えるなんて、なんとも恐ろしく信じがたいです。

そして実験室内にある資料を読んでわかったのですが、実験を行っていた黒幕は間違いなく学校でした。より優秀な生徒を生み出すためにこのような実験に手を染めていたそうです。
全く、理解ができませんよ。

実験台にされてしまった生徒たちですが、実験室にあった特殊な機械を使いもう一度魂を入れ替えて元通りに戻すことができました。
こんなに簡単に魂というものをコントロールできてしまうのは恐ろしいものです。

肝心の息子さんですが、実験が行なわれる前でなんとか無事でした。
そして僕がすぐに警察に通報をしたので無事に保護されました。
しかしまあ、親の執念というわけでしょうか？あなたがここまで頑張ってくれなければ息子さんは助からなかったかもしれません。
あなたはヒーローですね。

とはいえ驚いたのが、息子さんは自ら動物人間になることを志願したということです。
その理由はというものが「SNSでバズりたかったから」…だそうなのです。
息子さんは「動物人間になれば絶対にバズる。バズればクラスで人気者になれる。」と供述していたようです。

今までお伝えはしていませんでしたが、あなたの息子さんは犬の顔になる自撮りの写真をSNSにアップしたところ、とても話題になったことがあります。それによって彼は学校で一躍人気者になりました。
以降彼は同じような投稿を続けましたが、もう一度はバズることはありませんでした。
いつしか学校のみんなも彼を祭り上げることはなくなりました。
そんな彼は思い切って犬になってしまえば、またバズって、クラスで地位を得られると考えたのではないでしょうか？

SNSで人気が数字として可視化される時代…。クラスのヒエラルキーはSNSの数字が支配をしているのです。
それに囚われすぎた少年…。その行く末がこの実験体になることだったのです。

何とも恐ろしいです。

これはものすごいスクープなので学校新聞の号外として公開します。
さらには、学校内だけではもったいないのでインターネットで大々的に公開させていただきます。

こんな大スクープの調査はあなたがいなければできませんでした。
本当にありがとうございました。

僕もやっと人気者になれそうです。

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横田という少年…なんとも不気味な少年だった。
しかし、横田がいなければ私の息子は助からなかったかもしれない。
悔しいが感謝せざるを得ない。

横田が実験室に向かったその日、息子は無事に警察に保護され病院に検査入院をした。

そして数日後、退院した息子に会った。大切な息子が無事に帰ってきた。
傷ひとつなく、無事だった。

久々にまじまじと見た息子の顔は、少しやつれているように見えたがSNSに上がっているどんな加工された写真よりも可愛らしく、そして愛おしく思えた。

私の息子が人体実験を志願していたとは…。私は息子のことを何も理解できていなかったのかもしれない。理解した気になってしまっていたのかもしれない。

しかし、私が息子を愛しているということは揺るぎない事実だ。
その愛が行動に伴っていなかったのかもしれない。

今後はもっと息子の言葉に耳を傾け、会話を増やしたいと思う。

END